(掲載日:2002/12/20)
2.落語家 桂 小米朝さん   「手塚ランド」を宝塚に

 四歳のときにテレビ放映が始まった「鉄腕アトム」の白黒アニメが、初めて見た手塚さんの作品でした。アトムと「鉄人28号」が、当時の人気番組の双へきで、ずっと見てましたし、お菓子のおまけのアトムのシールを机にベタベターッと張ってありました。

 いまだに記憶に焼き付いているのが「ロボット流し」という話。精霊流しみたいにロボットを川に流すという、これが哀愁がありましてね。

 手塚さんの漫画のロボットには、必ず愛があるんです。人間の情感が漂うんですよね。未来の科学社会に、人間味を忘れたらいけないという警鐘だと思うんですよね。

 いろんな作品を読みましたが、高校生のときに「火の鳥」を読んで「これは漫画じゃないな」と驚きました。天文学や古代史や宇宙論…、手塚さんの哲学が結集しているような感じがしますね。学問書という気持ちで読んでましたし、何回読んでも新しい発見があるんです。

 年を取るにつれて、ひとつひとつの出会いに意味があって、「見えない糸」でつながっているような気がしてきた。「火の鳥」は、長い時間と空間を超えて繰り返し現れる、登場人物の案内役。この「見えない糸」の化身が「火の鳥」だと思ったりね。人はどこから生まれてどこへ行くのか―。人間の根源を問う作品ですね。

 だから若い人にももっと、手塚さんの漫画を読んでほしいんですよ。小学一年の娘と宝塚の手塚治虫記念館に行ったんですが、「ジャングル大帝」のビデオをじっと見てるんです。世代を超えて訴えかけるものがあるし、夢を与えてくれる。

 いわば世界に通用するソフトじゃないですか。来春、宝塚ファミリーランドが閉鎖されますが、手塚さんの夢を広げるようなアミューズメント施設にリニューアルするといいと思う。

 記念館だけじゃなく、漫画のキャラクターを使った「手塚ランド」ができれば、ディズニーをしのぐものになりますよ。手塚さんの独創性を、関西から世界に発信したいですね。

 かつら・こべいちょう 1958年生まれ。本名中川明。人間国宝、桂米朝の長男。オペラと上方落語を合体させた「オペらくご」創作など、多彩な趣味を生かして活躍する。   
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